日本ゴム工業会・ゴムライニングハンドブック
ゴムライニングについて
1.ゴムライニングの歴史
天然ゴムのライニングによる機器の防食が工業的に利用され始めたのは欧米では1920年代、日本では1930年(昭和5年)といわれている。始めは天然硬質ゴムライニングが塩酸を取扱う貯槽やタンク車などに用いられ、ついで軟質ゴムのライニング技術が実用化された。その応用分野も無機薬品工業から染料や紙パルプ工業へと拡大していった。その後とくに合成ゴムの工業化につれて、1950年代から各種の合成ゴムがその特色をいかしてライニングの分野にも用いられるようになった。また大型タンク類に対するライニングの現地施工技術も確立し、接着剤の進歩と相まってゴムライニングは大きな発展をとげた。今日では腐食や摩耗が問題になるすべての産業界において、高温・高濃度・高圧・真空などの種々の条件下ですぐれた経済的な耐食材料の一つとして高く評価されている。
2.ゴムライニングの特色
最近の目覚しいプラスチック工業の発展にもかかわらず、ゴムライニングが依然として独自の地位を確保して前進しているのは、次のような特色によるものである。
2.1 耐食性がすぐれていること。
- 一般にゴムは電気化学的に不活性で広範囲の無機・有機化合物に耐える。合成ゴムの使用によりこれまでの天然ゴムでは耐えられなかった強酸化性の薬品や有機溶剤の分野にまでその応用範囲が拡大された。また薬液を汚染するおそれも少ない。
2.2 耐摩耗性がすぐれていること。
- 弾性に富む軟質ゴムは摩耗粒子の衝突エネルギーを吸収できるので、固形分を含む液体に対しすぐれた耐摩耗性を示す。硬質ゴムの耐摩耗性は良好とは言えないので耐薬品性・耐摩耗性の両方の性能を要求される場合には全体を硬質ゴムでライニングし、摩耗を受け易い部分はその上に軟質ゴムの耐摩耗層を設けることもよく行われている。
2.3 下地金属に対してすぐれた接着強度がある。
- その接着強度はゴム層の破壊強度を上回る場合が多い。適当な接着剤を選定すれば高温においても実用十分な接着強度を示す。
2.4 信頼性の高い確実な施工ができること。
- 柔軟な可塑性の大きい未加硫ゴムシートを用いて金属体にライニングし、そのあと加硫する方法をとっているため、複雑な形状のものにも確実にシートを貼りつけることができ、シートの接合部は重ね合わせて圧着するだけで加硫後は融着して一体となる。
2.5 欠陥部は確実に検出できること。
- ピンホールやクラックなどの欠陥部は電気的(ピンホール検査)に容易に確実に検出できる。
2.6 正確な寸法を出すことができること。
- 天然硬質ゴムの場合、加硫後にゴムライニング面の機械加工を行って正確な寸法を出すことができる。
2.7 据付現地でのライニング工事が可能であること。
- 大型タンク類については据付現地でのライニング施工が可能であり、機器類の寸法上の制約を受けない。また修理も現地で行うことができる。
2.8 コンクリートにもライニングができること。
- ゴムライニングは金属体のみならず、コンクリートにも施工ができる。
3.加硫について
ゴム製品の製造プロセスには必ず加硫という反応工程が必要で、この工程においてゴムの長いひも状の分子は添加した加硫剤(天然ゴムでは普通イオウをもちいる)と反応し、分子どうしに橋かけ結合を生ずる。この加硫により柔軟な可塑性の大きい未加硫ゴムは弾性を有する軟質ゴムまたは硬い硬質ゴムに変わる。要約すればすべてのゴム製品は未加硫ゴムの可塑性を利用して成型し、加硫により耐久性のある加硫ゴムの状態に変える方法で製造されている。